労働者と経営者それぞれの視点で考える就業規則

就業規則をはっきりと理解している人はかなりの少数派です。
そもそもそれがわからないという人やどこにあるのかわからない人、会社にあるのは知っているけど見たことがない人や見たことはあるけど理解していない人など様々です。

いわば会社のルールブックであり法律です。
それを知らない中で働くことは非常に危険です。

残業代に関するルールの認識不足や賃金に関する計算式がよくわからないものだったなど、労働トラブルになってからその存在を知って面倒なことになるケースもあります。
それほど大事なものであり、確実に見ておいて中身を把握する必要があります。

◯雇用契約書とは?

就業規則と同じ意味合いを持つものに雇用契約書があります。
雇用契約書は会社と労働者が個々に交わす契約書です。
一方で就業規則は会社と労働者全員が交わす全体的な契約であり、雇用契約書をカバーし雇用契約書の代わりにもなるなどとても大事なものです。

ここで気をつけたいのは個々に交わした契約書と全体的な契約で食い違いが発生する場合です。
労働契約法では雇用契約書の内容が就業規則の内容を下回って契約することは無効とされています。
そのため、いずれかで食い違いがあれば基本的には労働者に利するような感覚でいれば大丈夫です。

◯書類は必ず作成する

では経営者の視点から就業規則に関して真っ先にするべきことは何かですが、まずはどちらの書類も作成することです。
中小企業によっては雇用契約書すらないところもあります。

どちらもない場合は労働基準法に違反しており、最悪の場合は30万円以下の罰金刑を科されます。
例外もあり、雇用する従業員が10人に満たないところでは作成義務がありません。

中小企業でこうした書類を作っていないのはそうした要素もありますが労働トラブルになってからでは遅いです。
せめて雇用契約書でも作っておかないと、後で面倒なことになってしまいます。

就業規則を作成すると労働基準監督署への提出が必要です。
この時に労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する人の意見が求められます。

労働者の過半数を代表する人というのは経営者が意図的に選んだ人ではない人であり、民主的な形で選出された人です。
裁判ではこの部分で争われることが多く、本当に民主的に選んだのか忖度を働かせるような状況ではなかったかなどが問われます。

形式的に行うところも存在するため、後になって揉めることがないように経営者としてはそのあたりの対処を考えておくことが求められます。

◯経営者は就業規則を周知させなければいけない

経営者や労働者双方に関係するのは周知義務についてです。
作ってしまえばすべてが許されるわけではなく、作ってそれを広めるまでが経営者がしなければならないことです。

周知の方法は作業場の見やすい場所に掲示することや書面自体を労働者に交付すること、電子媒体に記録して常にそれを確認できるようにしておくことなどが考えられます。

その一方で上司の机に入っており上司に言えばそれを見せてもらえた場合や閲覧の申請がない場合、鍵がかかっていない書棚の中に入っていた場合などでも周知がなされていたと裁判で判断されています。

労働者からすれば、上司に見せてもらうことをお願いすることは少し気が引けるとか会社に不満があると思われかねないと尻込みしてしまいます。
ただ閲覧の申請をして拒絶されることで周知義務を果たしていないという証明になるため、多少のわだかまりができたとしても見せてもらうしかありません。

経営者視点で考えると作業場のトップの机の中にでも入れておけば大丈夫という考えで問題はありませんが、より確実に労働トラブルを防ぐためには従業員に書面で交付した方がプラスに働きやすいです。
申請や拒絶などの精神的な負担をかけずに済むからです。

◯書面で従業員に交付する

また書面で交付することは経営者にとってはプラスが大きいです。
いくら従業員が認識していなかったとはいえ、その存在は周知しておりあとはその中身を認識するかどうかです。

法律では完全に中身を認識させなければならないとは書いてありません。
だから交付さえしてしまえば、そんな話は聞いていないと労働者から指摘されたとしても書面で交付した通りだと言えば大丈夫です。

もちろんリスクも大きく、それを持ち出されて外部に晒された場合のダメージは大きいです。
起業する人が今後作成していく場合は外部に晒されても恥ずかしくないものにしていくことが必要です。

それぞれの視点から考えると、双方にとってフェアな内容にしてフェアな形で広めることが大切であることがわかります。
そうすることで労働トラブルは防げます。

法律違反を犯したり労働トラブルを抱えているところはどこかでフェアネスの精神を失い、どうせバレないだろうという気持ちが出ています。
こういう労働条件で働くというのを労働者に完全に認識させてから働いてもらえば簡単に離職するようなケースは防げます。
労働者からしても明瞭に示してもらえば、会社への不満を抱くことなく働けます。

 

就業規則変更

最終更新日 2025年6月18日 by preserving